開催概要 ABOUT EVENT
九州大学での開催が予定されていた昨年の第62回大会は、新型コロナウィルス感染流行により残念ながら中止となりましたが、第63回大会は、九州大学が引き継いで主催することになりました。
これまで、開催方式について検討を進めて参りましたが、完全なかたちでの対面の開催は難しいと判断し、オンラインでの開催となりました。
研究発表につきましては、すでに研究例会等で実施されている方式を採用します。 シンポジウムにつきましては、現在デザイン領域で議論が進められている「多様性と社会包摂のデザイン」のテーマで、ライブ配信で開催します。 また、主催校で取り組んでいる豊富な事例も紹介する予定です。
パネル発表につきましては、事物やパネルの展示の代わりに、映像による展示形式といたします。3分程度の音声付きスライドショーや動画映像など、自由な形式とし、大会会期中、視聴できる環境を提供します。
オンラインとはいえ、少しでも開催校の特色を活かした大会としたいと考えております。 会員の方々の多数のご参加をお待ちしております。
- 大会実行委員長
- 伊原久裕
- 実行委員
- 尾方義人、楊 寧、工藤真生
シンポジウム SYMPOSIUM 意匠学会+
社会包摂デザイン・イニシアティブ共同主催
テーマ 「多様性と社会包摂のデザイン」
分断の時代といわれるこんにち、ひとびとの多様性を尊重しつつ、包摂型社会の実現を目指すデザインとして「社会包摂デザイン(Inclusion
design)」と呼ばれるデザイン活動が注目を集めている。おりしも2021年4月に九州大学大学院芸術工学研究院では「多様性のある包摂型社会の〈仕組み〉をデザインする先導的研究拠点」として、《社会包摂デザイン・イニシアティブ》が設立された。そうした機会を得て、多様性と社会包摂のデザインをテーマとするシンポジウムを、意匠学会と社会包摂デザイン・イニシアティブの共同主催で実施する。
社会包摂デザインは、従来のデザインがかたちや色などモノのデザインを中心とした活動であるとすれば、社会の〈仕組み〉が主たるデザインの対象とされる。であるならば、かたちや色を中心とする「意匠」としてのデザインは、どのように貢献しうるのかがが問われなければならないだろう。また、もうひとつのキーワードである「多様性」を真剣に捉えれば、モダンデザインに結実した近代デザインの価値に関わる問題も無視できないであろう。
このシンポジウムでは、こうした問題意識のもとに、社会包摂デザインについての理解を深めたい。そのために、まず社会包摂デザイン・イニシアティブの基本的な考え方と実践について紹介し、社会包摂デザインの基本概念を共有する。次に、視覚デザインの領域を中心とした次の3名の専門家から講演いただく。今年開催された東京オリンピック・パラリンピックの図記号の策定にも深く関わられ、近年では認知症者のためピクトグラムを提案されている定村俊満氏、色彩学の立場からヒトの色覚を異常ではなく多様性と捉え、新たなカラーデザインの方法を探求されている須長正治氏、そして、特別支援学校での知的障がい児のためのピクトグラム、文字の研究を進められている工藤真生氏である。最後に、以上の3名の講演者によるディスカッションを通して、意匠としてのデザインと社会包摂デザインとの創造的で有意義なあり方を探ってゆく。
- 共催
- 開催日時
- 2021年9月12日(日) 14:15-16:35
参加登録フォームはこちら 参加無料・一般の方も参加可能です。
申込締切:9/10(金)23:59
学会会員以外で研究発表の聴講をご希望の方は、
大会メールにてご連絡ください。
jsdc63th@gmail.com
- 共催
プログラム
14:15 - 14:35
- 尾方義人 九州大学芸術工学研究院教授
14:35 - 15:55
-
定村 俊満 株式会社ソーシャルデザインネットワークス代表
前サインデザイン協会会長 - 工藤 真生 九州大学芸術工学研究院助教 サインデザイン
- 須長 正治 九州大学芸術工学研究院教授 色彩学
16:05 - 16:35
- モデレータ:伊原 久裕 九州大学芸術工学研究院教授
- 尾方 義人+定村 俊満+工藤 真生+須長 正治
16:35 - 16:50
- 谷 正和 九州大学副学長 大学院芸術工学研究院長
- 谷本 尚子 意匠学会会長
ゲストによる講演
- 定村俊満氏
-
株式会社ソーシャルデザインネットワークス代表
前サインデザイン協会会長
「認知症の人にも優しい記号のデザイン」
2025 年には日本の高齢者5人に1人が認知症になると予測されている。しかし認知症の根本的な治療方法はなく、現在の治療は進行を緩やかにし、生活の質を高めることが目的とされている。
高齢者や認知症患者が尊厳をもち、自身の力で日常行動を管理できる生活環境づくりが求められる中、認知症の人が表示物や記号情報をどのように理解するのか、そのメカニズムの解明に取り組んだ。
- 工藤真生氏
- 九州大学芸術工学研究院助教 サインデザイン
「障害者本人から学ぶデザイン」
発表者はこれまで、ピクトグラム及びサインのユニバーサルデザインについて研究を行ってきた。また、特別支援学校の小・中・高等部で教育に従事した経験を有する。
2017年改訂の、JIS標準案内用図記号ピクトグラムの理解度調査では、一般と同じ調査方法が障害者に実施され、障害者121名中20名しか全調査に答えらず、結果が参考扱いとされた。ピクトグラムという代表的な公共デザインですら、障害を有する当事者の意見を踏まえる意識、調査方法が未発達である。あわせてデザイナーの考える「やさしさ」「わかりやすさ」が、障害を有する人にとって、「やさしく」「わかりやすい」のかは、常に疑問であり、当事者の意見を聞き取り、デザインに取り入れる姿勢が求められる。
本報告では、知的障害者を対象に行ったピクトグラム・サイン・書体の調査や実施事例、現在取り組んでいる、FINA2022福岡サイン&ピクトUDプロジェクト、具体的な場面をイメージした状況下でのピクトグラムの理解度調査の方法や結果について、紹介する。
- 須長正治氏
- 九州大学芸術工学研究院教授 色彩学
「カラーユニバーサルデザインを超えて」
発表者は,これまで,色覚およびその知見のデザインへの応用,特に,カラーユニバーサルデザインを中心に研究を行ってきた.カラーユニバーサルデザインとは,いわゆる「色覚異常」と呼ばれる特性を含む多様な色覚特性を持つ方へも,色彩による情報伝達を担保する配色法のことをいう.しかし,このカラーユニバーサルデザインはいわゆる「色覚正常」から「色覚異常」への配慮の域を出ない.現在,社会では色彩はコミュニケーション手段として用いられており,色彩が本当のコミュニケーション手段である双方向のものとなるためには,「色覚異常」を持つ人の色彩表現を「色覚正常」として理解できるのかが鍵になる.
そこで,本発表では,発表者がこれまで行ってきたカラーユニバーサルデザインに関する研究を紹介するともに,様々な色彩表現に対する「色覚正常」の受容度についてのひとつの実験結果も紹介する.